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廃墟の街デトロイト

文・長谷川昭雄

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デトロイトに初めて訪れたのは、約10年前。

隣町にあるアン・アバーの大学に通う友人に会いに行ったときだった。「デトロイトってすごいことになっているって聞くから、見てみたいんだけど」。そうお願いすると、彼女は少し嫌そうな顔をした。危ないし、そりゃ見に行っても得することなんてない。でも「少しならドライブスルーするよ」とダウンタウンに車を走らせてくれた。観光に付き合ってもらい、モータウンのレコーディング・スタジオを見学した。あのときは、わがまま聞いてくれてありがとう。

そのとき、私は想像以上の衝撃受けた。まるで、映画のセットに迷い込み、世界の終わりのワンシーンにいるようだった。ピカピカの新しい高層ビルが立ち並ぶ都会なのに、店も人もいなくてガラッガラ。。見渡す限り、生命の存在するかけらさえ見当たらない。ウェスタンの映画のように、タンブルウィードみたいなプラスチックの袋が飛んで舞っていた。さみしい。そして奇妙。遠くにホームレスみたいな、ゾンビみたいな影が。。「私、ここで何しているんだろう。」ハッと我に戻った途端、急に、友達の家に帰りたくなった。

あの時みた景色は、自分の中でどんどんドラマチックになってしまっているかもしれない。だけど、今まで信じていたこと、当たり前と思っていたことが目の前で当たり前じゃなくなった瞬間だった。現実の方が信じがたい時だってあるんだ。そう感じた出来事だった。